[著:つる]
グループBでドイツを破り、3連勝でグループを首位で抜けたクロアチア。
対するは逆転劇を重ね、滑り込みで決勝T進出を決めたトルコ。
はっきり言って決勝トーナメントの組み合わせの中で最も注目度の低いカードと言っていいだろう。
どちらも優勝候補とは言い難く、このゲームの結果が今回のEuroを大きく左右する試合になるとは考えにくい。
だが、そんな組み合わせのゲームが最高にエキサイティングな展開となることこそが、サッカーの面白さである。このゲームを見逃した人は確実に損をしている、そう断言していいゲームだった。
どちらもショートパスを主体とするチームに仕上げてきてはいるが、前線から労を惜しまないプレッシングを行うクロアチアは守備の意識が徹底されており、そしてモドリッチ、オリッチを初めとした選手が数少ないチャンスをものにする。一方のトルコは守備がやや乱れがちだが、追い込まれた展開で粘り強さを見せ、そして気付けば勝利を収めている。
スタメンを見てみるとクロアチアに大きな変化はなく、今まで通りモドリッチをボランチに配した4-2-3-1。対するトルコは攻守の要だったメフメット・アウレリオを累積でかき、今まで右サイドバックで起用していたハミト・アルティントップを今大会初めて中盤で起用。そして前節でレッドカードを受けたGKヴァルカンのかわりにはリュシュトゥ。リュシュトゥは日韓W杯で一躍名を挙げ、一時期バルサにも所属していたものの、軽率なミスが多く安定感にかけたため、再びトルコリーグに戻っていった経緯がある。
そして始まった前半、ミスがやや多く、どちらのチームが主導権を握るわけでもなく進んでいたが、最初のビッグチャンスはクロアチア。中盤から右に抜け出したモドリッチがDFとGKの間に絶妙なクロス。これをオリッチがつめるが、シュートは無常にもバーに跳ね返され、跳ね返りのシュートも枠を外れた。ピッチを叩いて悔しがるモドリッチ。結果から見るとこの一連のプレーが前後半通じての最大のチャンスだった。
クロアチアは守備の不安定なトルコDFラインの裏を盛んに脅かしていたが、これが得点に結びつくことはなかった。対するトルコも深い位置でニハトにボールがおさまらず、なかなか攻撃の形を作れない。そんな展開が後半も繰り返され、そして得点が生まれることはなく、延長戦へと突入した。
今大会の延長戦は得点が動いても前後半を必ず行うことになっている。つまりこの時点で選手達は120分の試合を行うこととなった。
始まった延長戦、やはり多くの選手が疲弊しており、交代で入った選手達が何度かチャンスを演出するも、決定的なチャンスは少なかったと言える展開だった。だが、この試合が最高にエキサイティングになるのはなんと延長後半の119分からだった。クロアチアが右サイドからのクロスをあげようとするのを、トルコDF陣がカット。このこぼれ球を処理するために飛び出したリュシュトゥだったが、このボールをモドリッチにかっさらわれ、ゴール前にクロスをあげられる。無人のゴール前でボールを受けた途中交代のクラスニッチがなんなく頭で決め、119分にして先制点が生まれた!トルコの不安の種が最悪の結果として出てしまった。対する不屈の人、クラスニッチにはこういったシーンがよく似合う。
そしてこの瞬間、多くの人がクロアチアの勝利を確信したはずだ。
ドイツと対決するのはクロアチアか。
だが、試合はここでは終わらなかった。
今まで逆転劇を演じてきたトルコが、いまだあきらめていなかったのである。
延長後半のロスタイム、GKからのフィードを前線が競り合い、このこぼれ球をセミフがなんとゴールへ吸い込まれるシュートを放った。この時間で、この展開で、この疲弊した中でなおも同点に追いついたトルコ、その精神力には感嘆する。個人的にはいつぞやのアイルランド代表を思い出したものだ。
選手交代を要求していたクロアチアの監督ビリッチは猛抗議するが、もちろん通るわけがなく、そしてタイムアップの笛が吹かれた。
今大会、もちろん初めてのPK戦。
このPK戦を詳しく語るのはやめよう(※)。クロアチアとしては、今までチームを支えてきた若手にこの大舞台の大役を任せたが、結果的にはこの若さがプレッシャーに勝てなかった、と言えるだろう。
結局クロアチアは2人が枠を外し、1人がストップされ、対するトルコは全員が決め、トルコが準決勝へ駒を進めた。これで準決勝1枚目のカードはドイツ×トルコとなった。私が記憶している中では両者の対戦はあまりない。
単純に見ればドイツ有利となるだろうが、先の戦いをみてもドイツのDF陣がトルコの攻撃に苦しむ可能性はある。ましてや競った展開となれば、彼らがだまってやられるほど甘くないのがわかったはずだ。ドイツがどれだけ彼らを突き放せるか、今から楽しみな一戦だ。
あなたはヨーロッパの舞台、楽しんでますか。
※コラム「歓喜に包まれる傍らで」参照
[著:つる]


